エロマンガ島でエロマンガ的な展開が有るなんて思ってもいませんでしたが、
体験したのは日本では感じる事の出来ないエロマンガの現実。
なんか謎な汁とかピシャって飛び散って痙攣しながら気持ち良いなんて事は、
美しい幻想であって、現実にはありえない。
カオリツリーをガイドしてくれたおばさんは、
私の部屋を訪ねてきて、いかにカオリツリーが蝋燭の代用を果たすのか、
教えてくれたのです。
親切。
親切といえば、バヌアツの人々は、一様に親切。
謎のツアーエージェントP(仮名)は言っていた。
「日本は400ミリオンのお金を出して、バヌアツに道路やインフラを作ってくれた。
だから、日本人はバヌアツを楽しんで行って欲しい」と。
お金の単位も解らないけど、400ミリオン。本当かどうか解らないけど。
1円≒1バヌアツバツ(VT)。計算が簡単。本当かどうか解らないけど。
こういう未来のある南の島の人たちにお金を注ぎ込むのは、良いことなのかもしれない。
確かに、アジア系ギャングが治安を悪化させる中、
日本人にはとても親切でした。
アスファルトの立派な道路と崩れない橋。
ソーラーパワーのある診察所。
人間より長生きするかもしれないTOYOTAの頑丈な車。
ボランティアが医療と英語と近代的生活を教えて、
バヌアツの文化は滅んでいきます。
西洋や日本と同じ生活に馴染めず、ガーデニングと称して村の周辺を歩き回り、
いたづらに花を摘んだり牛を洗ったりして、経済的に貧しくなってゆく人々。
2002年に1500人だった人口が、2006年には7000人にまでなっている、
幾何級数的に子供だけ増やす人々。
エロマンガ的と言えなくもないエロマンガの現実。
でももう、この21世紀に腰ミノと石ヤリの生活には戻れないもんね。
島の外から物資を購入しないと生きていけないんだものね。
なら、お金が必要なんだもの。
バンガローのテラスで「
愛と幻想のファシズム
」を読んでいると、
一人の見知らぬ青年が近づいてきました。
「島の反対側のipotaに新しいバンガローを始めたんだけど」
そんな風に切り出してきました。
「面白いアクティビテイーも多いし、ロブスターも食べれるよ」
「ここのバンガローはナイスじゃないでしょ?」
「日本人はもっと楽しんで行って欲しいんだよね」
要するに、このバンガローの今後数日の宿泊予約をキャンセルして
自分のバンガローに泊まりにきて欲しいという事を、
他の人のバンガローのテラスで行っているのだ。
信用できない。体裁よく断る。
すると、どこから聞いたのだろう、
私がインターネットの仕事をしていると知っているらしい。
「私はCDを持っていて、私のバンガローの写真が入っている」
「このCDはオーストラリアの観光客が送ってくれたものだ」
「私はパソコンを持っていないから見れないしネットに載せれない」
「CDを味噌maxの家に送るから住所を教えて欲しい」
「インターネットで公開して、日本人の観光客が私のバンガローに・・・」
私は断った。
でも、食い下がってきた。
「インターネットでWebサイトを作成するには、
ドメイン料とWebサーバのホスティング料金、Webデザインも無料じゃない。
私がプロだと知って頼むのなら、料金を請求するよ。
初期費用やWebデザインにウン万VTと年間保守にウン万VTでどうだ?
これでも商用としては格安だけど」
とか言ってみたら、やっと諦めた。
そもそも、そんな一枚しか持ってないようなCD-ROMを送られたって、
高い輸送費も含めて、私には重荷でしかない。
ちなみに、
この国での法律上の最低賃金は50VT。
そりゃ、地井武男でもなきゃ、散歩じゃお金儲からないものね。
そんな彼らに、私は一泊3000VTの宿泊料を払っている。
働かないこの島の人たちにはベラボウな金額かもしれない。
なにやってるんだ、俺?
この場所に、この金額で泊まる事は、彼らの為になっているのか?
薄い生地のムームーの、裸足の人達の村に、
デジカメでiPodでブランド物のブーツやサングラスで村の中を歩き回って、
子供に色鉛筆なんかプレゼントして、
たいしたサービスも受けずに法外ともいえるベラボウな金額の宿泊費を払って、
彼らの文化を侵略してない?
それが観光のつもりなの?
何だっけ、そもそも観光って、
カバを飲んでいるわけでもないのに、頭のどこかが痺れている。
宿には電気も水道も無い。シャワーも無い。
でも、実はインフラは有る。
全部壊れているのだ。
バンガローのオーナーM(仮名)は言う。
「電灯は明日までには直るから」「デジカメもチャージできるから」
「シャワーもホットなの使えるよ」「明日になればね」
それは何一つ実現しなかった。
この村には400人の人口で7軒の店があって、
どの店にも何の商品も無い。
じゃ、直せないよね。
でも、あなたの宿泊料が入れば直せるし、新しいバンガローが建てれるって、
あなたのお金で村の経済が育つって言われても、
旅行客の私に言われても、困るのよ。
私は。
言っておくけど、エロマンガ島に行きたいという人がいても、
私は勧めません。
一番の大きな理由は、何も無いからです。
観光資源が半端に大きな木くらいです。
人には言えないような洞窟くらいです。
美味しいものも、珍しい文化も、絶景も、なにも無いです。
電気も水道も何も無い所に行きたいというのなら、
もっと別のとことも有るよ。
でも「エロマンガに行きたい!」という、
子供の頃の夢を叶えたいというのなら、
私は止めませんし、行くべきだと思います。
それが「大人になる」という事なのかもしれません。
「最後の夜はお別れパーティーで豪勢なディナーだよ。」
Mは言いましたが、食事は日々貧しくなってきました。
最初の頃に出ていた蒸かし芋も、野菜も無くなって、
最後はご飯とスープだけ。
しょうがないものね。
お店に何の商品も並んでいないんだから・・・・
村を散歩している時に見かけたラプラプが、
美味しそうで、美味しそうで・・・
私がエロマンガ島に滞在中、
ヨットで浜辺に乗りつけた観光客が何組かいました。
決まってリタイアした老夫婦。欧州からの。
エロマンガ島で野菜やミネラルウォーターを補給したかったようだけど、
無いと知って、怒ってすぐにヨットで船出する。
エロマンガ島には三泊しました。
数年ぶりの日本人の客が帰った後、
エロマンガ島がどうなったのか、
私はもう気にしない事にしたいです。
観光客が増えても減っても、気にしない。
彼らの文化がどうなっても、気にしない。
Mが何らかの事情でバンガローを営めなくなった時、
エロマンガ島のツーリズムは終わってしまうのか、
ipotaの青年のバンガローが流行るのか、知りません。
ああ、もう、いいや、疲れた。
なぜか色々と頼りにされたけど。
彼らに幸せになって欲しいとか、豊かになって欲しいとか、
独自の文化を取り戻して欲しいとか、向上心を持って欲しいって、
本心から願ったとしても、
私には何もする事は出来ないし、何かをする事が良い事かどうか、
もう解らない。
それこそ何百億円か使い、
エロマンガ島に高度なインフラと教育施設と産業を作り、
無理やり就学就業させてみたらどうだろう。
いや、きっとそういうことじゃないんだ。
資本主義という名のネズミ講の貧乏くじを引かされた場所、人々は、
世界中のいたるところにあって、
どうにかしようというのはもう、夢想でしかない。
だったら願わないのも同じじゃないか。
気にしない。
忘れよう。
バヌアツの首都に戻った私は、
久々に都会的な暮らしに戻りました。
都会的っていっても、シャワーと電気があって、
インターネットカフェがあって、スーパーではワインが買えてってくらいだけれども。
ただし、
ホテルの経営者は100%白人。
商店やレストランのオーナーはずべて中国人か韓国人のアジア系。
走る車はTOYOTAかMITSUBISI。
スーパーで買えるものはオーストラリア産かニュージーランド産。
一歩路地裏に入ると、現地のメラネシアンの貧しい家が立ち並んでいる、メラネシアンの国の首都。
地球幸福度指標一位。
世界で一番幸せな国。
バヌアツを離れ、シドニーへ向かう飛行機の中、
何かから解放されたような自分と、
何かを背負い込んでしまったような自分がいました。
バヌアツ編はこれでおしまい。
面倒くさいし、書いて何かが報われるか疑問。
さて、この辺まで書けば、
私がウルル(エアーズロック)に登らなかった理由、
解りますか?
って前振りで、
次からオーストラリア編(マジで?
それにしても、
旅ってイイですね・・・
やめられません・・・