大晦日の夜。
麻布の焼肉屋「叙々苑」に二人の子供を連れた貧しそうな身なりの女性が現れ、
そして申し訳なさそうに「あの...イベリコ豚焼盛(2200円)...1人前なのですがよろしいでしょうか?」
と注文しました。
それを見てこっそり1.5人前のイベリコ豚を皿に盛る店主。
親子3人は一人前のイベリコ豚焼盛(2200円)を分け合って食べたのでした。
この親子、交通事故で父親を亡くし、年に一回だけ大晦日に、
父親の好きだった、叙々苑のイベリコ豚焼盛(2200円)を食べに来ることだけが、
その親子の贅沢だったのです。
そして、次の年の大晦日も、その次の年も、
イベリコ豚焼盛一人前(2200円)を頼む親子。
いつしか叙々苑の雇われ店主は、
大晦日にイベリコ豚焼盛(2200円)を注文する親子の来店を楽しみにするようになり、
毎年大晦日は親子の座る2番テーブルをリザーブするようになったのでした。
しかしある年からパタッと来なくなる親子。
それでも親子のために2番テーブルをリザーブし、待ち続けた叙々苑の雇われ店主。
そして十数年後のある日、すっかり大きくなった子と親の三人が再び叙々苑に現れる。
子供達は就職し、すっかり立派な大人となり、母を敬いながら、
親子三人でイベリコ豚焼盛(2200円)やら特選カルビ(4500円)焼や、
あわび焼(10000円)やらフランスのワイン(時価)などを何度も頼むのでした。
店主は涙で頬を濡らしながら...
「お会計98950円です。カードでお支払いですね。」
1 件のコメント:
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
コメントを投稿